数ヶ月前のように思えるほどに、濃い一週間だった。
日 お腹の中にいるジョイスと4人で賛美した。
月 ジョイスを産んだ。
火 ジョイスが天国に帰った。
水 遺体と一日過ごした。
木 棺とともに退院し、ジョイスを火葬した。
金 病院へ挨拶に行った。
土 夫が泣いた。
この腕の中で、短いけれども”人”の一生を見た。胎から出た瞬間から、鼓動が止まり、体が骨と灰になるまでの娘の生涯を見届けた。喜び、 憂い、生と死をこの一週間で経験した。火葬をして、娘の骨を拾い”喪失感”と
いう感覚を知った。
そして、また日曜日が来て、教会で神様に会い 新しい一週間が始まった。
もう、ジョイスはここにはいない。音楽が大好きだったジョイスはいない。
だから、家族3人めいいっぱいに手をあげて、ジョイスと神様のいる天国に向かって賛美した。ジョイちゃんにも、この賛美が聞こえるだろうか。
神様に言った。悲しいときこそ、あなたのうちに喜んでいれるようにしてください。涙するときこそ、あなたを褒めたたえる歌が歌えますように。ふさぎ込みたいときこそ、天をみることができますように。
教会の礼拝は出席したい人がでる。クリスチャンでもさまざまな理由で出席できない人もいる。娘を亡くして落ち込んでいるからこそ、家に留まるのではなく、私たちにこの運命を与えた神様の前に立とうと思った。神様がジョイスを与え、またジョイスを取られた。あなたが私たちを乗り越えさせる道をくださるに違いない。
自分を見つめたところで何も良いものは出てこない。良いものは天からくだってくるから、天を見よう。神様とジョイスのいる天を見上げよう。自分の心を見ればどこまでも自己憐憫に浸りることができる。
ジョイスが旅立ってからは、止まってしまっていた一週間だった。
でも、この日曜日に教会で神様に賛美の歌をささげ、感謝と憂いとすべてをぶつけたら心が軽くなり、何かが変わったのを感じた。
私の止まった時間が、ようやく動き始めたのを感じた。
もう、私は大丈夫だと思った。
ジョイスが天国に旅立った後は、思考が停止してしまっていた。助産師さんに渡すはずの検尿をトイレに流してしまったり、食後に、出生証明書と死亡届けに必要事項を記入しようと机に向かったら、ペンではなく歯ブラシを手に握っていた。歯ブラシすることも、シャワーを浴びることも2日間忘れていた。
骨壺とともに戻ってきた我が家。家族の会話が耳には入ってくるものの、何を言っているのかよく分からず、まるで雑音のように思えた。娘に本を読んであげるにも感情が入らくなくて、抑揚をどこにつけたらいいのか分からない。横で眠る娘の心が読めなくて、寄り添いたい願うにも関わらず我が子が久々に会う親戚の子のように思えた。
めまいと頭痛がして、産後の体も痛む。歩くのも咳をするにも痛む。
夫も同じだった。
産後4日目に、病院を棺とともに後にした。ジョイスの体を火葬した帰りに、夕暮れの河川敷に夫とふたり座り空を見上げた。
ねぇ、あなた泣いた?夫に聞いた。
まだ、感じないんだ。ただ、何も感じられないんだよ。
そして夫が空を見上げて祈った。
神さま、ジョイスを見せて欲しい。ジョイスが無事に天国にいるのか教えて欲しいと言った。
ジョイスの死後、夫は関係者への対応、手続きや娘のこと、とりあえず早朝から深夜まで止まることを許されなかった。忙しさとあまりの変化に、
夫は思考ではなくて、心が停止していた。
長女は、ジョイスがどこに行ったのかを理解しようとしている。
ジョイスが旅立った朝に、娘はジョイスにバイバイを言ったが、まだジョイスがいないのに慣れていないようだ。
ジョイスのいるヘブンはどこにあるの?どうやっていくの?ジョイスはヘブンで何しているの?いつ会えるの?小さくなってママのお腹に入ったら会えるのかな…?
こうやって消化していくのだと思う。娘が溜め込まずに聞いてくれて、少し安心している。
家族三人、それぞれに乗り越える壁があるが、私たちには神様がついているから大丈夫だ。今日、娘のお昼寝時間に、娘が眠りに落ちる瞬間を見て、心に優しい温かいものが再び戻ってきたのを感じた。
回復しつつある、普段の私に戻りつつあると思った。
聖書に”試練”についてこう書いてある。
試錬を耐え忍ぶ人は、さいわいである。それを忍びとおしたなら、神を愛する者たちに約束されたいのちの冠を受けるであろう。ヤコブ1:12
神様、ジョイスをありがとう。ジョイスが天国で幸せにいることを感謝します。この世は一瞬で、天国では永遠に生きるのです。私たちが、この試練を耐え忍び、いのちの冠を受け、神様とジョイスのいる天国の門を必ずくぐれるように真の信仰をください。私たちの心を再び喜びで埋め、この涙さえも突き進む強さへと変えてください。
ジョイスは、神様といて幸せだから大丈夫だけれど、親としてお願いさせて欲しい。どうぞ、今日もジョイスを守ってください。
神様、あなたの御名をたたえます。
土曜日の夜に夫がようやく泣いた。そして、日曜日にもまた涙した。夫の心もようやく動き始めたようだ。今日の夫には、青空のようにすっきりとした、私の好きな爽やかな笑顔があった。私たちは、もう大丈夫だ。
これから、神様がくださった祝福の一週間を私の日記をもとに書き、シェアしていきたいと思う。また、お世話になった方のことも感謝を込めて紹介していきたいと思います。ジョイスの写真もアップしていきます。
今日も皆さんの愛と祈りに感謝します。